世界中の専門家、学者の研究によると、ヒルトンが小説に描けた「シャングリラ」の原型は、中国雲南省迪慶チベット族自治州にあります。1997年9月14日、雲南省政府は記者会見を開き、全世界に向けて「シャングリラは迪慶にある」と宣言しました。2001年12月17日、中国中央政府の許可を得て迪慶チベット族自治州の中甸県(ちゅうでんけん)がシャングリラ県(香格里拉県)へと名称を変更し、ここで、「シャングリラ」は事実上雲南省迪慶チベット族自治州を指すこととなり、そして世界中の人々がここに詰め掛け、心の中の理想郷を探します。
迪慶(シャングリラ)の歴史は6、7千年前に遡ります。約2300年前、吐蕃(とばん、7世紀初めから9世紀中ごろにかけてチベットにあった統一王国)の原住民はこの地に繁栄と豊かな文化をもたらしました。唐永隆元年(680年)に吐蕃がこの一帯に「神川都督」を設置し金砂川に鉄の橋を建て南詔(なんしょう、8世紀半ば、中国西南部、雲南地方に勃興したチベットビルマ語族の王国)との連携を図りました。
宋代になると吐蕃が衰退し大理国の支配下に入り、善巨郡の管轄とされました。元朝は宣政院の管轄とし、明永楽4年(1406年)、「刺和庄長官司」となって「雲南都指揮使司」の管轄下に置かれました。清嘉靖-万暦の間(1522-1573年)、迪慶は麗江土司木氏の支配下に入り、清雍正5年(1727年)清国が迪慶地方の支配権を接収し、全域を「雲南巡撫」の管轄としました。
民国元年(1912年)中甸地方に中甸県が設置され、1950年人民解放軍が進駐し迪慶全域が解放され、「麗江地区専員公署」に所属しました。1957年9月、中国中央政府の許可を得て雲南省迪慶チベット族自治州が成立し、1973年8月に雲南省直轄の自治州となって今に至ります。