飛来寺は、雲南省徳欽県から8キロ離れ、雲南省とチベットを結ぶ滇蔵国道に建てられ、明万暦42年(1614年)に創建された385年の歴史を持つチベット寺院です。敷地面積は1500㎡あり、正乙山の地形にしたがって階段状に建てられています。曲がりくねった川、木漏れ日輝く松の森、さわさわとした葉ずれの音、心の和む風景が楽しめます。寺の正門に「古寺無灯凭月照、山門不鎖寺雲封」と書かれ、寺の幽静さを語っています。
飛来寺は子孫殿、関聖殿、海潮殿、両廂(部屋のように仕切られた所)、両耳(廂と同じ)、四配殿からなり、儒教、道教、仏教の三つを合一させて巧みに配置されています。海潮殿は中心的存在でその建築と彫刻は最も優れています。本堂は「単檐懸山頂、七檀抬梁式」(中国古代建築の様式、日本で言えば切妻屋根で、大平が1層、陸梁(ろくばり、屋根の重さを受けて下へ伝わる役割)が7本)で、棟と柱はすべて太い丸太を採用し、広々として荘厳な雰囲気が漂っています。軒の支える柱の下に大きな須弥壇(仏像を安置する台)の石台座があり、上に人物や花、装飾文様などが彫られ、軒下の華美な木彫り、窓や門、木格子に施された花鳥風月の彫刻などと相まって、精美を極めたものとなっています。
海潮殿は山を削って造られ、岩壁が本堂の壁となっています。今なお頑丈で壮観です。御本尊の「竜王娘の嫁入り図」は、職人によって岩壁から彫り出されたものです。その左は十八羅漢、右は西遊記の物語、彫刻は緻密で神業と賞賛されています。
寺の前に一筋の泉があり、これを飲めば歳を取らないと言われています。これを飲み、持ち帰る観光客のため廻りは賑わっています。展望テラスへ出ると、梅里雪山の絶景に圧倒されます。天を突く頂は一年中雪に覆われ、普段仰向けに見る雲は山の腰辺りにふわふわと浮いていて、そこに人を寄せ付けない、聖地ならではの神秘によって凛とした雰囲気が漂っています。
飛来寺は、釈迦とこの寺を開いたインド人学僧パドマサンババを祀っており、本堂の壁画に宗喀巴大師、勝楽金剛、天人、及び周辺寺院の活佛(化身ラマ)、寺の創建者などが描かれています。飛来寺には、以前霊峰に面して日中合同隊遭難慰霊碑があったのですが、新しい展望デッキの建設と共に取り除かれ、今は明永氷河の入り口に新しく設置されています。立ち並ぶチョルテン(チベット語で仏塔を意味する)は、十世パンチェン‐ラマが徳欽県を視察したことを記念して建てられたと言われています。