観音峡景勝地は、麗江から南東17キロ離れた「七河郷」にあります。総面積約千ヘクタール、雪山、峡谷、湖や滝、原始林などの自然景観と、ナシ族村落、茶馬古街、寺院、遺跡、民俗などの人文景観を併せ持つ総合的な景勝地で、「麗江第一景」と評されています。
景勝地は「黄龍淵」と「観音峡」の二大スポットを含み、間を385mのトンネルとトロッコで結びます。景勝地入り口には最初のスポット--「茶馬古道」があり、茶馬古道(チャバコドウ)とは、雲南省で取れた茶(磚茶)をチベットの馬と交換したことから名付けられた交易路です。唐の時代にはすでに交易が始められ、20世紀中ごろが流通の絶頂期と言われています。雲南省南部からチベット、ミャンマー 、ネパール 、インドなどへ抜ける幾つかのコースがあります。
観音峡は、麗江にある六つの関所の一つ--「玉龍関」の入り口です。かつての茶馬古道において麗江からチベットに入る唯一の関所で、17世紀には土司木氏が要塞を設けていた場所です。「木家橋」を渡れば、当時の税関である木家の別館が目に入ります。「三坊一照壁、四合五天井」と言う典型的な麗江の民家の造りで、外壁には蜂の巣構造が採用され、繊細で美しく、頑丈な建物です。ここはかつて要所として栄えていたことを思わせます。
(三坊:戸長の居住する最も立派で軒も高い、正房と正房の両側にある控えめな造りの廂房。照壁:中庭を挟んで正房の反対側にある厚い壁。四合五天井:4セットの家屋に5つの中庭)
古い街並みには、今なお数多くの工房や老舗が営業しています。大工、革屋、鍛冶屋、銀職人、民宿、飲食店、売店などが、先祖代々に亘り伝統的な家業を営み、ナシ族の昔ながらの生活が垣間見えます。お土産屋もたくさんあり、トンパ文字のもの、木彫り、刺繍、書画などの民芸品が店頭に所狭しと並んでいます。また、ここにはたくさんのナシ族トーテムポールが設置されています。上にはライオンやトラ以外、カエルも彫られており、自然に畏敬の念を持ちながら暮らしているナシ族の守り神たちに違いありません。
更に進むと、「天香塔」と言う、小石を積み重ねてできた仏塔があり、ナシ族独特の仏塔で天を祭る儀式が行われます。ほかに、明末の著名な旅行家、地理学者の徐霞客氏が宿泊したと言われる「霞客亭」や、濃厚な宗教的雰囲気が漂う「チベット文化院」なども、散策に値するスポットです。人で賑わう市街地を出ると、ひっそりと佇む湖と湖畔に造られた「滇蔵茶楼」が目に入ります。古くて優雅な趣が漂う茶楼は、新緑から深緑まで、鮮やかな緑に囲まれています。水辺に咲き誇る野花、しなやかな垂れ柳、瑞々しい竹林、澄み渡る空など、楼と一緒に、広くエメラルドグリーンの水面に映され、幻想的な風景となっています。
鬱葱とした竹林を通り抜けると、山をくりぬいたトンネルがあり、ここでトロッコに乗り山の裏に出ると渓谷があり、かなり大きい滝が落ち込んでいます。道端に大きな石碑が設置され、「麗江観音峡」と書かれています。峡谷は峰々に囲まれ、谷底から轟々と水の流れる音が聞こえ、景色は静寂で美しいです。山峰の向こう側を、落ちる銀河のように豪快に流れる滝は観音滝です。滝の少し横に白い観音様の像が置いてあり、観音峡、観音滝と呼ばれる謂れでしょう。戻りは、トロッコを使わず、樹木や野花が生え茂る山を迂回して、船で「月牙島」を経由し木家の別館に戻ります。実に緑と水の豊富な土地ですね。