大理周城は、大理古城の北から約23km離れたところにあります。名所「胡蝶の泉」に隣接し、大理喜州鎮が管轄する大理で最も大きな自然村(農耕、漁労を営む、自然に形成された村落)です。村には1500世帯余りが暮らし、観光化によって今はペー族のテーマパークとなっています。石畳の路地が入り組んでおり、かつては路地の入り口に門楼(門の上に設けた楼)や照壁(表門の外に立てられた目隠しの塀)などが設置されていましたが、戦乱の際に兵火に遭い廃れました。村には大木が茂り、木の下にある小さな広場には古い劇の舞台が設けられ、周囲には売店などが立ち並び、村人の市場と娯楽場として賑わっています。反り上がる瓦屋根の重なった美しいペー族古民家群は、細かい装飾が施され、家屋の前に玉砂利で作られた水路が引かれ、蒼山からの清冽な湧き水が水路に沿って村を巡り洱海へ流れ込みます。
喜州鎮と同じく、周城の建物も「三坊一照壁、四合五天井」と言う典型的なペー族の民家の造りとなっています。三坊とは、戸長の居住する最も立派で軒も高い、正房と正房の両側にある控えめな造りの廂房です。照壁とは、中庭を挟んで正房の反対側にある厚い塀のことです。四合五天井とは、4つの連なった家屋と5つの中庭を意味します。ほとんどの民家は土木構造の二階建てで切妻屋根が二重に作られ、屋根の庇がピンと反り返った独特の建築様式となっています。外壁が一般的に上は白く下は灰色に塗られ、芸術的価値の高い建築様式です。
ペー族建築は照壁、門や窓、壁、門楼などの装飾にこだわっています。特に照壁は、中庭に欠かせない一部として重要視されています。正房正面の部分は高く、両側(廂房の正面部分)は低く造られています。壁全体は白く塗られ、書、図案、水墨画、油絵、或いは大理石を嵌め込んで装飾します。門や窓は雲南杉、ツバキなど高価な木材を採用し、鶏、カササギ、麒麟など幸福、好運を願った彫刻が施されています。正門は文様をあしらった石の基礎の上に設置し、基礎は「海東青山石」という上質な石材を用いられています。門は緻密に作られ、上に美しく細かい装飾図案が彫られています。また、正門には屋根や斗拱(ときょう、斗組、軒などを支える木の組み物のこと)などが付いて、庇の部分はゆるくカーブを描くように反り上がり、華麗にして荘重です。
周城は小さな田舎町ですが、数多くの名所が存在します。近辺の胡蝶の泉、龍首関(上関)、町内の銀相寺、龍泉寺、本主廟、及び村の奥にある神摩洞などが挙げられます。明代の徐霞客氏(旅行家、地理学者)近代の郭沫若氏(文学者、歴史学者、政治家)など、多くの著名人がここを訪れたと言います。また、周城は大理名物の扎染を盛んに作っているところとして有名です。扎染は、明、清代からこの染色技術で布を染め、現在も伝統技法を守っています。白く残したい所を糸や縄できつくしばり、染料に浸し染めてから糸を解くと、染まらなかった所が模様として浮かび上がるようにします。ペー族の工芸品である扎染は、芸術、文化、歴史的価値が高く、国内外の観光客から人気を集めています。鮮やかな藍色に浮かぶ白い模様は素朴でシンプルでありつつも、豊かな民族風情を演出するだけでなく、その独特の個性からファッションの一部としても歓迎されています。